その日、地元の街に一軒だけある居酒屋で、高校卒業15年を記念して同窓会が行われていた。ざわついた雰囲気のなか、同級生たちは酒を酌み交わして近況を語り合い、昔を懐かしんでいる。

ふと誰かが僕に語りかけた。「お前、相変わらず無口だな・・・どう？出世した？なんだかんだ、リストラもされないでお互いにサラリーマン頑張っているよな・・・。オレは、相変わらず海外出張ばかりで大変だよ。この間もさ・・・」

彼は僕らの同級生の中では出世頭で、どうも最近、海外支社長になったらしい。口癖は「期待されちゃってるからホント忙しくてさ・・・」で、会えば自慢気に話しかけてくる。年収もいいらしい。正直、うらやましい存在で彼のようになりたいと思っていた。唯一、彼が人生に不満があるとすると、土日関係なく仕事をしているから、家族との時間がほとんど取れないことらしい。これも会う度、彼から聞かされたことだった。

そして僕も、家族と過ごせないこと、子どもと一緒に遊んでやれないことから、時間を自由に使うことのできないサラリーマン人生に疑問と不満を持ち続けてきた。僕は彼と違って、年収は平均かそれ以下だし、出世もしていない。年々、実質の手取り収入は減っていたし、子供の学費とか家族の生活費、親の介護とかを考えるとお金の心配も尽きなかった。与えられた仕事はそつなくこなす、マジメな仕事ぶりだけで会社にいられるようなもので、いつ窓際に追いやられるかと不安な日々を過ごしていた・・・ついこの間までは。

同窓会は近況をひとりひとりが発表するプログラムになった。次が僕の番だ。何と言おうか散々迷ったけれど、僕はありのままを伝えることにした。

みんな、ひさしぶり・・・。実は、会社を辞めたんだ。

一瞬の沈黙の後・・・皆、笑い出した。口々に「信じられない！」と言い、笑っている。「え～！お前、マジかよ！」「転職先はあるの？」「マジメがとりえなお前がなんでそんなチャレンジングなことやるんだよ！」・・・などと言いながら心配してくれつつも、「バカなことをしたもんだ」という感じで笑っている。

すると出世頭の彼が心配そうに言った。「なんで、お前は会社を辞めるなんて選択をしたんだ？」

僕は彼に伝えた。一番の理由は、家族との時間の為・・・

・・・サラリーマンをやっていると、ある意味生活は安定するかもしれない。でも、子どもの学校行事に参加するとか、一緒に遊んであげるとか、宿題を見てあげるとか、そういう父親らしいことをする時間が、自分で作り出せないことに気付いたんだ。どうしても会社の命令に従わざるをえない。妻に家事は全て任せっぱなし。コレでいい筈ないよなってずっと思ってた。

二番目の理由は、将来的なお金の不安・・・そして三番目は

・・・自分が得意なことでサラリーマンを辞められることに気付いたからなんだ。・・・ここまで話すと、また出世頭の彼は言った。「つまり、サラリーマンを辞めて・・・得意なことで独立・・・起業したってこと？」

僕は頷いた。そう、僕は起業したんだ。

・・・「何の仕事で起業したの？」誰かが言った。僕は答えた。もともと僕はサラリーマンの時、ずっと人事をやっていたんだ。人事に関する知識やノウハウが僕の唯一といっていいほどのスキル。まさか人事で得たスキルで起業できるなんて思わなかった。だけど、人事を置きたいけど人事担当の年収を捻出できない中小企業ってたくさんある。そしてそういう会社は人事トラブルを抱えている。だから僕はそんな複数の中小企業に対し、人事の専門家としてアドバイスできるんじゃないか、って気づいた。それらの会社にしてみれば、人事担当を1人採用するよりも安い人件費で済む。まさに “WIN WIN” なんだ。もちろん、

最初はやれるか不安だった。家族の生活もある。だから

・・・会社を辞める前から準備をしていたんだ。僕が選んだ外部人事アドバイザー・・・いわば「外部人事部長」の仕事は、事務所を借りる必要がないし、設備投資をする必要もない。それに従業員を雇う必要もないから、起業にかかる経費はほとんど必要ない。だから、サラリーマンを続けながら、副業としてリスク無く準備を進めることができたんだ。・・・すると、また誰かが言った。「どこでそのやり方を教わったの？」

僕はカバンから1冊の本を取り出し、答えた

・・・自分の「売れる」スキルを発見して武器にする方法とか、お客さんの見つけ方とか、低コストかコスト無しでできる11の集客手法とか、起業に必要な方法と手順がこの本に書かれている。お客さんにリピートしてもらうやり方まで書かれているから、起業してやっていくための攻略本みたいに使うことができる。サラリーマンを続けながら起業に踏み切ることができたのは、この本のおかげと言ってもいいくらい。そして僕は、

サラリーマン時代の年収を超え、家族との時間を手に入れた。

・・・起業したおかげで僕は、望み通り家族との時間を手に入れることができた。子どもの成長を見守る時間を自分の意思で作り出せるって、ホントに幸せだなって思う。それに年収を会社任せじゃなく、自分の手で増やすことができるようになった。

いつの間にか笑いは止み、周囲は驚きの表情を浮かべていた。

出世頭の彼が初めて僕を嫉妬しているように見えた。・・・僕は続けた。これからまた消費税が上がるかもしれないし、年金も減るかもしれない。そして僕らも親の面倒をみる時が近づいている。子どもの教育にはお金を惜しみたくない。そしてお金だけでなく、これらに取り組む時間も必要になる。だからもし、自分の得意なことや専門知識、それらを武器にして外部アドバイザーのように仕事をしたいと思ったなら、

この本を読んでみて。
次に何をすればいいか、わかるから。